2017/10
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ほどほどで、いいじゃない
充実した育児書が誕生しました。昨年10月末の発売ですが、ず?っと忙しかったこともあり、やっと全部目を通しました。著者の毛利さん、山田さん、おふたりとも大先輩であり、面識もありますが、ここでは一応「敬称略」で書かせていただいてます。

『育育児典』

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以下は感想です。
長い間、日本の育児書のスタンダードといえば、同じく岩波書店から発行された、松田道雄『育児の百科』であった。改訂を重ねた超ロングセラーであり、私自身も、この書に学び支えられながら子育てをした。最近では批判的な意見を述べるむきもあるようだが、平易でわかりやすい文章、あくまで子どもと子どもを育てる人(とりわけ母親)に寄り添う視点、やはりスタンダードと呼ぶにふさわしい書だった。

その松田道雄が死去して今年で10年になる。松田なき後の育児書の書き手として、この二人の著者に声がかかったのは、自然なことだろう。

ともに長い経験のある「町医者」であり、育児に関する著書も多い。医者にありがちな専門用語の羅列ではない、読みやすい文章の書き手でもある。

松田『育児の百科』とちがって、この『育育児典』は二分冊となっており、「暮らし編」を毛利が、「病気編」を山田が担当している。子どもの病気には、年齢によって多い少ないがはっきりしているものもあるが、そうではないものも多いし、子どもの育ちのプロセスやそれに伴う生活上の注意と、「病気」という事態への対処とは性質が異るので、この構成は合理的だと思う。

この育児書のよい点は、まず「よけいなことが書かれていない」ことと、「親を脅すような文言がない」ことだ。これは実は同じことの裏表だとも言える。
医者というのは因果なもので、えてして知っていることを全部書こうとし、書き漏らしがあってはならないとばかりに詳細を極めようとする。結果、めったにない病気、とか、すご?く珍しい事態、などが、よくある病気やありふれた心配事と同列に並んでしまったりする。それだから、トンデモナイ重い病気を心配して病院に来る、なんてことが起きる。

ここでは、日常の子育てでありがちなできごとや病気が、あんばい良くとりあげられている。一方でさほど珍しくはないけれどちょっと深刻な病気にも触れ、また子どもの健康という意味では病気以上に重大と言える事故についても述べられている。未熟児、障害児という「少し変わった生まれ方・育ち方の子ども」にも目配りされ、多様な家族やくらしのありようも踏まえられている。だから、読み物としてもおもしろく読める。

二人の著者には意見のちがう部分もあるようだが、共通しているのは「ほどほどで、いいじゃない」ということだろう。育児に「完璧」はないし、子どもは病気をするものだ。ひとりとして同じ子どもはいないし、だから親もひとりひとりの子どもにふりまわされたりもする。それでもけっこう子どもという存在はたくましく、何とか育っていくものだ。

読んで楽しく、何かのおりに開いても実際的で役に立つ。出産のお祝いなどには最適でしょう。

なお毛利は予防接種については批判的な見解で有名であり、ここでもそれに沿った記述がされていて、違和感を持つむきも(特に医療関係者には)多いだろう(私も「ここまで言わなくても」と思うところはある)が、それもひとつの見解として知っていていいことだと思う。
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