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境界に生きるものたち
週に1回は本の話を書こう、と思っているのだけれど、PC故障のあおりを受けて遅くなってしまいました。

「守り人」シリーズ第3弾が、ようやく文庫化されました。
『夢の守り人』

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以下は感想です。
短槍つかいの用心棒、バルサを主人公とするシリーズ、第3弾。今回はバルサの幼馴染、薬草師タンダと、その師である呪術師トロガイの物語、ともいえる。

旅の途中、ひょんなことから不思議な歌い手・ユグノを助けたバルサ。一方タンダは、眠ったまま目覚めなくなってしまった姪、カヤの治療に苦慮していた。そして決死の術でカヤの夢の中に分け入った彼は、逆にそこに囚われてしまうことになる。一方宮廷では、夭折した第一皇子の母、一ノ妃が、やはり眠ったまま目覚めなくなっていた・・・

もうひとつの世界「ナユグ」の池のほとりで、数十年に一度開花する夢の花。その花を見守る「花番」と若きトロガイ、そしてユグノとの縁。人の夢によって育まれ、夢の歌を人の世に送り出す「花」の世界が、子を失った悲しみを凝らせた母の悪夢、その妄執にひきずられ、「夢の子」を縛りつけ人々を死へといざなう世界に変貌しようとする。

この「夢の花」の世界の歪みを解き、捕らわれていたタンダやカヤ、他の人々の魂を、<この世>に取り戻したのは、タンダに<この世>でつながる人びとであり、束縛に抗った「夢の子」ユグノの歌声、より正確に言えば、<この世>でのユグノの歌を愛でる精霊「リー」たちの力ぞえであった。

このシリーズのどの物語にも共通することだが、この物語もまた多面的多重的な「読み」が可能である。「三の宮」の誕生によって、必ずしも確固たるものではなくなった「皇太子」の地位にあって、なすべきことをなそうとしながらなおも自らの意志のおもむくところに従い、帝とそれを支えるシステムに対して果敢に詐術を使うチャグム。「夢の花」のありようをさえ歪めてしまった、「母性」の悪魔的側面。精霊に愛でられ、異様に長い生命を与えられたゆえであろう、歌い手ユグノの何やら浮世離れした、人の世のあれこれにたいして距離をおく、言ってみれば妙に達観した態度。

しかし今回何より中心を成すのは、共同体から離れた、あるいははじきだされた存在であるトロガイやタンダの生きかた、であろう。もともと隣国の生まれであり、用心棒稼業でもあるバルサは、まさによそ者であり漂泊者である。しかしタンダは村の傍にいて村で出た病人を治療する者であり、トロガイは旅に出ることが多いとはいえやはりそこに根拠地をおく者である。そうではあるが、やはりかれらは村の共同体の「中」の者ではない。そのことが、カヤの父であるタンダの長兄とタンダやトロガイ、バルサとのやりとりの中で、鮮明に示される。

共同体の中にいる者でなく、「もうひとつの世」にも触れるが、そちらの者でもないものたち。今回の物語の主役は(ユグノも含めて)そういう「境界に生きるものたち」なのだ。そして、宮廷の中枢にいるチャグムもまた、やはり様々な意味で「境界」にいるのだ。

共同体とその外に広がる異界、そこを行き来する者たち、境界に留まる者たち。その重層的な世界が、今後の物語の豊かな拡がりを予感させる。
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