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ちょっとできすぎではないかと思った
 文庫化された『ぼんくら』がわりと面白かったので、買ってみた、宮部みゆきの時代小説。物語づくりの巧い作家だと思うし、読みやすい作品が多いので、よく読む作家のひとりですが、う?んこれはちょっと話ができすぎかなと思ってしまった。

 『孤宿の人』

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 以下は感想です。
 舞台は四国の小藩・丸海藩(もちろん架空の地名)。まあ場所的には丸亀を想定すればよい。時代は徳川11代将軍将軍・家斉のころ。城下の町場は、漁業と、金比羅参りの人々を対象とした旅籠と、紅貝を使った染物で成り立っている。

 さして豊かでもないこの小藩に、江戸から、乱心して妻子を斬り殺したというもと勘定奉行・加賀が流されてくる。彼が幽閉される屋敷は、もともと祟りの噂のあった場所。長年使われることのなかった屋敷に、鬼になったと噂される加賀が入ることによって、再度不吉なことが起きるのではないか。揺れる民心、やがて次々に起きる騒動と、水面下の策謀の展開が、物語の骨子である。

 物語は、何人かの視点からつづられる。加賀の流罪に先立つこと半年ほど前、江戸からやってきて、縁あって医家の下働きをしていた少女・ほう。漁師町に生まれ、今は引き手(江戸でいう岡っ引き)見習いとして働く若い女・宇佐。ほうの奉公する医家の長男・井上啓一郎。啓一郎の道場仲間で同心の渡部一馬。

 宇佐は町場の庶民の立場から、渡部は町の事件を扱う役人の立場から、井上は藩の中枢にもかかわる重職の医家の一員という立場から、それぞれ事件を見、かかわっていく。そして事件の中心部にいて、最も重要なことを見聞きする役回りを担うのが、ほうである。

 井上の妹・琴江の死に始まり、城下の武家につかえたもと下男の死を巡る謎、加賀の周囲に出没する刺客の影と、それにまつわるいくつもの死、不穏な空気の中いつになく蔓延する夏の流行り病、雷害、暴動と火事・・・と次第にスケールアップし収集がつかなくなるかのような事件の結末は。

 かなり長い話なのだが、飽きずに読めるのはまあさすが。しかし、どうも物語の中心がしっくりしないというか。

 まず、主人公(と言っていいいのだろう)のほうが、あまりにも「いい子」すぎる。難産の末に生まれ、ろくな世話もされずに育ち、知恵付きが遅く、「阿呆のほう」と言われる少女に、「無垢」の役割を担わせたのだろうけれど、やはりそれはちょっと無理があると感じてしまう。というか、「無垢」というレッテルをそこにを貼付けるのは、月並みにすぎるし、リアリティがなさすぎる。

 それから、最も主要登場人物であるはずの加賀の、存在感が薄い。この人も「いい人」につくりすぎではないか。仮にも幕府の勘定奉行として、遣り手でならした人物であれば、もう少し厚みというかアクがあってよいのではないかと思うし、その孤独の凄絶さもそうとうのもののはず。それが描かれていないと思う。

 つまり、たくさんの事件が起きて人がバタバタ死ぬ割に、中心人物が平板にすぎるんですよね。
 
 比較的印象に残ったのが、ほうがいちばん最初に預けられ、中盤から宇佐が働くことになる荒れ寺・中円寺の和尚(最後にも登場)であったというのも、何だかなあ。
 
 
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