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「新型インフルエンザ」臨床像のレビュー論文・続き
えーと、前回の続きです。

前回のあらすじ、じゃなくて、まとめ。

2009年春にメキシコで発生した「新型インフルエンザ」、ウイルスの遺伝子は北アメリカとユーラシアの豚インフルエンザ由来。
子どもと若い人が最も感染しやすく、重症にもなりやすかった。高齢者は感染しにくいが、入院するほどになると死亡率は高い。
感染力は季節性と同程度か、少し高い。
基礎疾患がなくても入院となった例もある(4分の1?半分)。重症化するリスクは季節性と同様。
先住民など、栄養状態や医療へのアクセスで不利な条件下にある人たちでは死亡率がより高い。


なお、感染して症状が出た人の死亡率、アメリカでは0.048%、イギリスでは0.026%、となっていましたが、では日本ではどうか?というと・・・
はっきりした数値はない(ようだ)のですが、12月初めの時点で推定患者数累計1200万人(ここ)、厚労省がまとめた死亡数120人ちょっと(ここ)、なので、0.01%、ですね。
さて、続きです。

ウイルスの病原性については、季節性のウイルスに比べ、肺組織でもウイルスがよく増えることが示され、これが、ウイルス性の肺炎を引き起こすことにつながっているのではと示唆されています。はなやのどのウイルスの量は、発症した日がピークで、徐々に減っていきますが、季節性に比べて長く感染性を持ち、子どもでは、熱が下がって6日後でも、感染力のあるウイルスが排出されるということです。つまり、熱が下がったあと1週間近くは、実は他の人にうつす可能性がある、ということですね。重い肺炎を起こした人などでは、ウイルスの減り方はもっとゆっくりになります。

免疫反応については、入院するような重症の人では、血液中の「サイトカイン」がの上昇が著しいこと、また、感染すると速やかに抗体ができるものの、一度かかってもまたかかるという例がある、と述べられています。

死亡例では重篤な肺の病変があり、心筋炎が見られた例もある(日本でも報告がありました)。細菌性の感染の合併が死亡例の26?38%に見られたとのことです。

その後に検査データについて書かれていますがこれは省略。

乳幼児では、ひどく不機嫌になったり、逆に眠りがちで声かけに反応しなくなったり、飲みが悪くなったり、脱水のためにショック状態になったり、けいれんを起こしたりすることがある、とされていますが、そこまで悪くなった子は診なかったですね。大きい病院ではそうした子どももいたかもしれません。あとは細菌感染症の合併、脳炎・脳症。赤ちゃんでは細気管支炎、幼児ではクループのため入院が必要になることもあるが、必ずしもICUに入らなければならないほどではない。

胎盤を通してお母さんから赤ちゃんに感染した例、出生直後にお母さんからうつった例もある。新生児の感染では、無呼吸、多呼吸、チアノーゼなど。妊婦は重症になったり、流産・早産・胎児仮死となるリスクが高い。

診断については、他の、呼吸器症状を呈するウイルスの病気と症状的には似通っているので、誤診された例もあること、迅速検査は感度が悪く、陰性だからと言ってインフルエンザを否定できないこと(これはよく知られていますね)、などが述べられています。

新型インフルエンザウイルスに大しては、ノイラミニダーゼ阻害剤(タミフルやリレンザ)が効果があり、妊婦を含む、リスクの高い人では、ノイラミニダーゼ阻害剤による治療が特に重要である。耐性ウイルスが出ていなければ、軽症のインフルエンザにも使える。

タミフルで早期に治療することで、入院期間を短くしたり、ICUに入ったり死に至るという重症化する人を減らせる可能性がある。早期に治療しても死亡する例はあるが、発症後48時間以上たっていても、タミフルの投与は入院患者の死亡率を下げる。抗ウイルス薬による治療は、検査で診断が確定するまで待つべきではなく、発症後48時間以上経って症状が進行している患者はできるだけ速やかにタミフルによる治療を始めるべき。重症の患者の場合、検査が陰性でも、他の病気と診断されるまでは治療を続けるべき。

合併症がない場合、通常はタミフルを使えば上気道(のどやはな)のウイルスは速やかに消えるが、感染性のあるウイルスが、解熱後、あるいは治療終了後に検出されることもある。

耐性ウイルスが散発的にみられているが、通常は軽症。ただし免疫抑制状態の人にとっては致死的になることがある。静注用ノイラミニダーゼ阻害剤ベラパミルは、タミフル耐性ウイルスに対しては感受性が悪い(効きにくい、ということです)。

最後に、今後の展望として、抗原性の変化や耐性、毒性の変化について継続的に監視する必要性と、医療資源の乏しい国や地域、辺境地域や難民、先住民などや、貧困や言葉の壁などで医療へのアクセスが遅れて重症になる可能性のある人たちについて、社会的要因も考慮した公衆衛生的な対策の必要性が述べられます。また、過去にそうであったように、今後流行の中心がより高齢の人にうつっていくことが考えられるとしています。

また、より効果的な治療法の確立、重篤な呼吸障害の管理方法、細菌感染の合併の予防と治療法の向上を目指すべき、としています。現在知られている知見からは、重症例では早期の抗ウイルス薬と抗生剤の使用が重要であること、また予防としてはインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンが有用であること。そして、国の間で知識や経験のギャップがあることから、臨床研究における国際的な協力の必要性が、強調されています。

今まで断片的には報じられたり、論じられてきたことで、そういう意味では「これで初めて知った!」ということは少ない(解熱してもかなり長期間ウイルスが排泄されるということくらいかな?)のですが、あらためてまとめて読むことができました。

なお、日本での死亡率の低さは、やはり医療へのアクセスのよさによるところが大きい、と思われます。入院するような肺炎・呼吸障害は、インフルエンザと診断できる以前、熱が出てから12時間以内くらいの早い時期に症状が出ていることが多いのですが、それに対して、酸素を使うとか、必要なら人工呼吸器を使う、といった治療が早く行われることが可能だった。

多くの「新型インフルエンザ」の人は、季節性と比べても軽症でした。一方で、早期から呼吸が悪化する人がいる。

だからこそ、インフルエンザの救急受診は、「熱が出たから」ではなく、意識や呼吸の状態で判断してほしい。意識や呼吸の状態が安定していれば、熱が出て12時間とか24時間とか待っても、特別な不都合はないからです。重くなる兆候のある人の治療に、病院の医師が集中してあたることができるように、冷静に対処していただければなあと思うのです。
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