2017/09
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ミステリではないな
相変わらず断片的にしか本が読めてません&軽い本しか読めてません。備忘録的に。

『赤朽葉家の伝説』桜庭一樹。創元推理文庫

単行本は2006年12月に出ているので、4年遅れで読んだことになる。熊本への飛行機の中で読了してしまった。
単行本が出たときに書評なども読んでいたので、「鳥取の田舎の旧家の女三代の話」であるという予備知識はあったが、なんだかもっとおどろおどろしい話を想像していた。

孫世代の赤朽葉瞳子が語り手。まず語られる祖母・万葉は、製鉄所の職工に拾われた、未来視の能力のある娘(山の人=サンカの娘らしいことが示唆されている)。鉄工所の主・赤朽葉家の奥様(この人もどうも何かしら神がかり的)に見出されて長男の嫁となる。未来の夫や舅、息子の死を幻視する万葉の物語は、たしかにやや神話的である。
しかし時代は明治どころか昭和、しかも戦後である。万葉のケンカ友達・みどりの兄のエピソードなど、戦争の影をまだ色濃く残しているとはいえ、製鉄所は近代化されていき、高度経済成長の波が山中の村にもひたひたと寄せてくる。とはいえ、京極堂シリーズ@京極夏彦にも感じることだが、昭和20年代(万葉の子ども時代)ていうのは未だ魑魅魍魎妖怪変化がどこかにひそんでいる(信じられている)雰囲気がある。

その娘・毛毬はお嬢様のくせにツッパリの暴走族、足を洗った後は売れっ子少女漫画家。破天荒ではあるがぐっと今ふうだ。万葉の夫・赤朽葉家御曹司の「お手つき」の女中とその娘(毛毬の異母妹)という陰湿キャラも出てくるが、どこか突き抜けてあまりベタベタ感はない。一方男たちは仕事と女に食いつぶされるキャラと、高等遊民キャラに大別できる感じ。

そして三代目の瞳子は祖母や母のような破天荒さのない、ごく「普通」の現代の女の子。祖母が言い遺した「人を殺したことがある」という言葉の真相を、ちょっと頼りないカレシと一緒に探る、というのが最終章のメインストーリーだ。

万葉の子ども時代を除いて、私自身が直接に生き、見聞きしてきた時代であるので、そこここに挿入されている「時代背景の解説」みたいなものはちょっとうるさく(言い換えれば表面的であるように)感じたのだが、若い読者には必要な説明なのだろうか。最後の謎解きも、解かれてみれば「なあんだ」というようなもので、やや拍子抜けの感がある。まあ「ミステリ小説」ではないんだなあとしみじみ。

ちょっと駆け足感があるが、「大河」なわりにべたつかないところはいいなと思った。
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