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今さらながら「20mSv」について考えてみる(5/13追記)
原発の事故の影響で、福島県内の学校や幼稚園・保育園の校庭・園庭で放射線濃度の高いところがある、ということがわかり、文部科学省が4月19日付で「福島県内の学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」という通知を出しています。

この中で、文部科学省は、1年間に浴びる放射線量が20ミリシーベルト以下となる量をめやすとし、屋外での活動が1日8時間、屋内(木造として放射線量は屋外の半分と考えられる)が16時間という仮定のもと、校庭・園庭の放射線量が1時間あたり3.8マイクロシーベルト(マイクロはミリの1000分の1)以下であれば通常の屋外活動を可とし、これを超えるところでは屋外活動を制限するように、としています。この基準値は高すぎるのではないのか、ということで、様々な議論が行われ抗議活動も起きています。

放射線の健康影響の問題はかなり難しいのですが、子どもの健康にかかわることで、ずっと気になっていたことでもあり、自分自身の頭の整理のためにも、ここで1回書いておこうと思います。
文部科学省の「暫定的考え方」や、その後に行われた文部科学大臣の記者会見でいちばん問題なのは、「子どもが対象なのに年間20ミリシーベルトでいいのか、そう考える根拠は」ということが明らかでないことと、あたかも「20ミリシーベルト以下ならよい」と言わんばかりで、放射線量を下げていく道すじ(最近報じられた、表面の土を削りとって埋めるなど)が示されなかったこと、の2点だと思います。後者については、3週間たってようやく方向が示されました。自治体によってはこれを待たずに対策をとりはじめていたところもあります。

では、そもそも「年間20ミリシーベルト」の放射線量とはどれくらいのものなのでしょうか。

放射線の健康への影響には「確定的影響」と呼ばれるものと「確率的影響」と呼ばれるものとがあります。「確定的影響」というのは、ある一定の量までは影響が出ず、その量(しきい値といいます)を超えて初めて症状が出てくるもの。放射線によって臓器の細胞が傷つけられるのですが、数が少なければもとどおり回復する、ある程度以上の数の細胞が傷つくと回復しないために症状が出てくる、というもので、しきい値以上では、受けた放射線量が多いほど症状が重くなります。また個人によって放射線への抵抗力が異なる(「感受性が違う」といいます)ので、症状が出る人の割合は、線量が上がるに伴ってS字カーブを描いて増えていきます。(こちらを参照してください)

「確定的影響」としては、嘔吐、脱毛、白内障、不妊、造血機能低下(血液の成分が十分作れない)などが知られています。臓器によって異なる確定的影響の症状としきい値についてはたとえばこちらの表などに示されています。また全身に浴びた場合も含めるとこんなふうです。

houshasen.jpg

また胎児への影響も確定的影響で、100ミリシーベルトで死亡や奇形、120~200ミリシーベルトで重度の精神遅滞が生じるとされています。

一方「確率的影響」というのは、がんや白血病、遺伝的障害で、線量が増えるにしたがって、症状が出る人の割合が直線的に上がっていくと考えられているもので、これについては「しきい値」はないものとして防護を考えるのが現在の考え方です。一方、がんや白血病は放射線だけによって起きるものではありませんから、まったく放射線を浴びなかったからといって確率がゼロにはなりません。また自然界にも放射線はありますから、放射線を浴びる量そのものもゼロにはなりません。

がんや白血病の確率的影響の判断の基礎になっているのは、原爆後の発がんについての調査結果です。この調査では、統計的に意味のあるがんの増加は100ミリシーベルト以上浴びた場合にみられています。時おり「100ミリシーベルトに達しなければ大丈夫」というような言い方があるのは、たいていはこのことをさしています。しかし、それ以下であっても、これは「もともとあったがんや白血病」の数に埋もれてしまうだけなので、「まったく影響がない」という意味にはなりません。「はっきりした証拠が得られない」というだけだと考えるべきでしょう。

また、確定的影響も確率的影響も、年齢が低いほど大きく現れることもわかっています。たとえばがんや白血病についてはこのような調査結果があります。生涯で何らかのがんが発生する率についても次のようなデータが出されています。

houshasen2.jpg

これは比較的高い放射線量を短期間で浴びた場合なので、1年かけて20ミリシーベルトという場合と単純に比べるわけにはいきませんが、おとなと子どもを同じように考えるわけにはいかない、ということにはなると思います。

そもそも文部科学省はICRP(国際放射線防護委員会)の「非常事態が収束した後の一般公衆における参考レベル」1~20mSv/年の範囲を参照しつつ、その上限の値を採用しているわけですが、子どもを対象にしたときになぜ上限に設定するのか、低めに考えるべきではないのか、という疑問はどうしても出てくるわけです。

あと、これはあくまで外からの被曝を考えているので、グラウンドの土埃を吸い込んで・・・みたいな内部被曝の問題は考えていません。そのことだけとっても、表面の土をなんとかしなければならないのは明らかです。この点では地元自治体が早めに動いているのはいいことだと思います。

もちろん、では子どもたちだけ「疎開」させるのか、とか、学校ごと汚染の少ない地域に移すのか、という議論になると、それはそれでいろいろ問題が出てきますし困難も多いでしょう。しかし、文部科学省の対応だけ見ていると、はたして子どもの健康を第一義としているのか、授業再開を優先しただけなのじゃないか、と疑いたくもなってしまいます。

【5/13追記】
全然知らなかったのですが、12日の定例記者会見で日本医師会が見解を出していました。
「文部科学省「福島県内の学校・校庭等の利用判断における 暫定的な考え方」に対する日本医師会の見解」(pdf)

「そもそもこの数値の根拠としている国際放射線防護委員 会(ICRP)が 3 月 21 日に発表した声明では「今回のような非常事 態が収束した後の一般公衆における参考レベルとして、1~20 ミリ シーベルト/年の範囲で考えることも可能」としているにすぎない。
この 1~20 ミリシーベルトを最大値の 20 ミリシーベルトとして 扱った科学的根拠が不明確である。また成人と比較し、成長期にあ る子どもたちの放射線感受性の高さを考慮すると、国の対応はより 慎重であるべきと考える。」

と、ここで書いたことと同じようなことが書かれています。

【5/13追記その2】
文部科学省の試算と同様、1日のうち8時間を屋外、16時間を屋内で過ごすとしたときの、年間に浴びる放射線量はこんな感じになります
毎時0.07マイクロシーベルト(現在の東京・新宿の値)→0.4ミリシーベルト/年
毎時0.1マイクロシーベルト(現在の茨城県水戸市の値)→0.58ミリシーベルト/年
毎時1.7マイクロシーベルト(現在の福島県双葉郡の値)→9.9ミリシーベルト/年
毎時5.3マイクロシーベルト(現在の福島県飯舘村役場前の値)→31.0ミリシーベルト/年
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