2017/09
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下痢は増えていたのか
原発事故の後、「関東地方で鼻血や下痢が多発している、これは原発事故による放射線の影響である」という説が、ネットで繰り返し流されました。

広島・長崎への原爆投下の後、放射線を浴びた方に鼻血や下痢などの症状が現れた、というのは事実ですが、今回の事故で周辺住民が(まして距離のある関東圏の住民が)、それに匹敵するほどの放射線被曝を受けた事実はありません。そのような指摘がなされると、今度は、「高線量の外部被曝によるものではなく、低線量の内部被曝の症状なのだ」という説が流れてきました。

「低線量内部被曝による急性症状」というものが、はたしてありうるのか。「今まで知られていることに基づく限り、ありそうにない」と考える人と、「ありうることではないか」と考える人との間に、深い溝ができているように思います。

私自身は、「現在のような低線量の外部/内部被曝によって、鼻血や下痢のような症状があらわれている」ということは、「ありそうもない」と思っています。自分自身の持っている知識に照らしてそうであるという以上に、現に「鼻血や下痢で受診する子どもが増えた」という事実がないからです。
むろん、私の見ている事実だけであれば、たまたま私のところに来る患者さんが少なかっただけ、ということかもしれません。ほんとうに「鼻血や下痢が増えている」のかどうかを判断するためには、もっと多くの医療機関での数を見なければなりません。

「鼻血」についてはおそらく統計はないのですが、「下痢」であれば、ふつうは、決められた医療機関から、患者さんの数が、「感染性胃腸炎」として、「感染症動向調査」にあげられます。これは都道府県別に集計されていますから、それを見れば、3月の原発事故以降に極端に増えているのかどうか、を確かめることができます。

まず東京都です(クリックすると拡大します)



3月11日は、10週の最後にあたります。例年同じようなカーブで増減していて、今年はむしろ昨年より少し少ない程度、「例年より多発」とはとても言えません。

関東ホットスポットと言われている千葉県。

chiba.jpg

過去5年のうちでは少ないくらいで推移しています。

同じく茨城県。

ibaraki.jpg

これも同様です。

福島県。

fukushima.jpg

震災・津波・原発事故による医療機関や行政の混乱のためと思われますが事故後しばらくのデータはありません。しかしその後のデータは過去2年より少ないくらいです。県外に避難された方の多さを反映しているのだろうと思いますが。

このように、福島県も関東ホットスポットと言われているところも東京も、「下痢が多発している」という事実はなかった、というしかありません。

まず、落ち着いて事実を確認することが大切なんだなとしみじみ思います。

追記:言わずもがなとは思いますが、診察した医師が「この下痢は感染症ではなく放射能によるものだ」と考えれば、「感染性胃腸炎」としては届け出ないことはありえます。しかし、統計に影響を及ぼすほどの数であれば、学会(「地方会」というのもあります)で発表されるとか、マスコミに載るとか、ということになるようなトピックですから、そういうことで「感染性胃腸炎」として統計にあらわれる数が減っているということはまずないと考えます。

<出典>
東京都感染症情報センター
千葉県感染症情報センター
茨城県感染症情報センター
福島県感染症情報

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