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『家族で語る食卓の放射能汚染』 を読む
安齋育郎さんの『家族で語る食卓の放射能汚染』(同時代社・1200円+税)を読みました。

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安齋さんは、「放射線防護学」すなわち放射線の持つ有害な作用をどのように防ぐか、という学問分野の専門家であり、かつ、原発に反対する立場から研究や住民運動に関わってきた人でもあります。そのような立場から、チェルノブイリ原発事故後、食品の放射能汚染問題に直面して書かれたのがこの本のもとになるものです。今回、福島第一原発の事故を受けて内容を補い、あらためて出版されました。

このように書くと、「内容が古いんじゃないか?」と思われるかもしれません(私も読む前はちょっと危惧していました)。しかしそんなことはありませんでした。この本の主な内容は、放射線や放射性物質に関する基本的なことがらで、そうした事項(放射線や放射性物質の物理的な性質)は25年前と変わったわけではないからです。むしろ、今回の事故を受けて「緊急出版」として出されたものに比べ、内容も表現もこなれたものになっていると感じました。
本書は4つの章で構成されています。

まず第一章では、著者が今までにどのようなテーマをめぐって研究をしてきたか、が述べられています。言わば、本書を著すにあたっての著者の立場の表明です。ここで安齋さんは、5つの問題を挙げています。

1.原発問題。安齋さんは、政府の原発政策を厳しく批判してきた学者の一人ですが、その原点は、原発で働く人の健康や、周辺住民の安全への問題意識にあったことがわかります。
2.核戦争の問題(というか、核兵器廃絶の問題)
3.医療被曝の問題
4.日常生活の中の放射性物質の問題
5.自然放射線や天然の放射性物質の問題

第二章では、放射線や放射性物質の基礎的な事項が説明されます。原子の名前に「セシウム134」とか「セシウム137」とかいう数字がくっついている理由。「放射能」ってそもそもどういう「能力」なのか。放射線の種類と、それらが普通の光線(可視光線)と違ってやっかいなのはどうしてか。「ベクレル」とか「シーベルト」とかいう単位はどういう意味なのか。(なおここで、「放射線の強さは距離の二乗に反比例する」というのは、距離が十分に遠くて線源が点と見なせる場合であり、うんと近づいた時にはあてはまらない、ということも書かれています。これを理解していないと、「接していたら無限大なのか?!」ということになってしまうので、なにげに大切なことですね)。「半減期」とは何か(半減期が長いということはなかなか放射線をださないということなので、半減期長い=こわいということではない、ということも述べられています)。放射性物質が身体にとりこまれたときの「有効半減期」の考え方と、蓄積の考え方。天然の放射性物質であるカリウム40が私たちの体内にどれくらいあり、そこからどれくらい被曝しているか。自然放射線がどこにどれくらいあるか。

第三章は、放射線が人体にどのような影響を与えるか、が述べられます。確定的影響と確率的影響、とくにわかりにくい確率的影響の考え方。放射線による障害が「非特異的」である、ということの意味。放射線障害を防ぐ(放射線防護)の基本原則について。

第四章は、とくに食品の放射能汚染にどう対処したらいいか。チェルノブイリ事故に際しての具体的な事例を挙げつつ、どの程度の汚染があればどれくらい体内にとりこまれるのかの提示。内部被曝の計算方法。ここを読むと、たまに少ししかとらない食品が高度に汚染されている場合と、毎日一定量を食べる食品が少し汚染されている場合とでは、後者のほうが被曝が多くなることもありうる、というのがよくわかります。

第4章の最後に、食品汚染にどう対処するかについて5項目の提言が書かれています。
1.食品汚染の実態を知ること:国や自治体による詳細な測定と公開に加え、「消費者が、科学者とも協力して、自主的監視活動を旺盛に展開すること」。

食品の中の微量放射能を測ることは簡単ではないので、測定できる数に限りがあります。数少ない測定値から食品全般の汚染状況を推定する必要が生じますので、こうしたことについての科学的知識を要します。『科学者友協力して』という意味はそういう内容を含んでいます


というのは重要だなと思いました。

2.放射能汚染が国の輸入許可基準(注:これはチェルノブイリ原発事故後の状況を想定。今なら「国の暫定基準値」と読み替えるべきでしょう)以下であっても、それなりに放射能が含まれている食品は、あえてその消費を奨励しないこと:K40による内部被曝に比べて低ければ絶対的に禁止する理由にはならないが、なるべく被曝を少なくするという原則に照らして、ある程度以上のものは「みんなで食べよう運動」の対象にしないとか安売りを控えるなどの提案です。

3.汚染の実態はできるだけ公表し、消費者の選択の自由を保障すること

4.汚染食品伴うリスクを評価するには、感情に溺れず、科学的な評価結果をふまえること:本書などを参考にする、それでもわからなかったら専門家にどんどん質問する。そのことによって専門家も鍛えられる。

5.食品の放射能汚染に対する関心を持続し、供給者との間に好ましい緊張関係を築くこと

全体に、適切な譬え話を交えてわかりやすく書かれており、かつ、現状を理解する上で必要な基本的知識はほぼ網羅されています。勉強会のテキストとして使うのもいいのではないかと思いました。
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