2017/09
≪08  1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30   10≫
リスクと生きる、死者と生きる
石戸 諭/亜紀書房

序章の言葉に、この本の姿勢が示されている。
"震災と原発事故が投げかけているのは、「喪失」という問題"
"喪失との向き合い方というのは、徹底的に個人のものでしかありえない"
"当事者であってもわからないことも、当事者であるから言葉が揺らぐことも、言葉にできないこともある"だから"誰かの経験を、誰かに代わって語ることに、慎重にならないといけない"

「何ものも代表せずに個人が個人として語る言葉を聞きたい」という著者が訪ね歩いた現場は、3つの章に分かれている。第1章は、福島第一原発の事故で避難を余儀なくされた地域、その事態に向き合ってきた人たち。第二章は、津波によって多くの生命が失われた地域、親しい人や見知らぬ人の死に向き合ってきた人たち。第三章は、チェルノブイリと福島、それぞれの過酷事故の経験を、将来に向けてどう伝えていくかに取り組んでいる人たち。

どの人たちも、それぞれの立場で、「個人として」「揺らぎながら」起きてしまったできことを引き受けながら歩みを進めている。それは単純な美談でも悲劇でもなく、矛盾に満ちた現場での苦闘であり、だからこそ、読者たる私たちにも、おそらくそれぞれの置かれた場によって異なる共鳴がある。

個人的にはWEB掲載時に元記事を読んでいたものがほとんどだが、加筆されていることもあり、新たに知ったことも、あらためて考えたことも多かった。喪われたものは「復興」が進んでも二度と戻ることはない。その喪失の記憶、喪失を悼むことの持続、その上に伝え続けられるものが、「未来」につながるのではなかろうか。
関連記事
Secret
(非公開コメント受付中)